語彙・ボキャブラリー(5)

さて基本単語を身につけるには(あえて、覚えるにはとは言わない方が良いでしょう)、どういう点を注意すべきなのでしょうか?

  • 私個人の経験からは次のようにまとめられます:

    1. 何回も何回もそういう単語に出くわす必要がある
    2. 単語単独でなくコンテキストの中で出くわす必要がある
    3. 目からだけでなく音としても出くわす必要がある
    4. writing、speakingで使う必要がある
    5. 上記をlong termで続ける覚悟が必要
  • 1)です。世の中には単語帳を何回もめくっても覚えられない自分を嘆く方が沢山おられます。私は記憶力は良い方ですが、それでも「覚えよう」とだけした単語が「身に付いたためし」が無いのが実情です。あきらめてひたすら何度も何度もそういう単語に出くわし続ける方が、遙かにのちのち「身に付いた」ということになるようです。この辺りはmindsetの問題なのでいかに早い時期にそういう風に割り切れるかが大事だと思います。
  • 2)はとても大事です。ちょっと下の簡単な文章をご覧ください:

    部下 「Well, I am afraid it is difficult to launch the product within a year.」
    上司 「What do you think it would take to get there?」

    部下 「う〜ん、この商品を一年以内に発表するのは難しいと思うんですが。」
    上司 「達成するとしたらどうしたらいいと思うかい?」
  • 上司の文章なのですが、ご覧のようにとても簡単な基本中の基本単語で構成されています。そしてとてもよく使われる表現です。でもtakeという単語を単語帳で「とる、連れて行く」などと無機質に覚えただけではこの文章がピンとくることはありません。いろいろなコンテキストの中で無数に出くわしていくうちにtakeの使われ方の幅が身に付いてきます。言い換えればその単語の語感と本質的な意味の習得が必要と言うことです。
  • 3)は当然であり、最近はCDや通信教材などがかなり浸透してきているので敢えて説明の必要もないでしょうね。活字としてだけでなく音としても習得しておく必要があるのは当然です。
  • 4)。これはイメージ的には写真現像の課程に似ています。焼き付けた印画紙を現像液につけると像が浮かび上がってきます。そしてそれを定着液に浸して消えてしまわないように化学的に固定します。単語を使ってみるという作業はこの定着作業に感覚的に似たものがあります。そしてその単語を使うことを意識せずになった頃には完全に「定着」していることが多い物です。
  • ただoutputには多少のリスクが伴います。ネイティブにとっては余り使われもしないような単語を多用してしまっているかもしれませんし、ウロ覚えの表現を「知ったげ」に使っているのが見え見えだったりしかねません。これは意外と単語量を自負しているマニアっぽい人に見られたりもする傾向です。ここでも1)と2)が大事なことが分かりますね。

    「あら、どこ行くの?」
    「厠(かわや)でござる」
    「…」
  • 次回から少し具体的なアプローチを掘り下げてみましょう。